前回はオートキャド(AutoCAD)のモデル空間で図面の分割をする場合の問題点を挙げてみました。
作図対象を少しずつ重ねて表現する必要があって、それをすると図面枠同士も当然重なってくる。

だから印刷をする際には、それらの重なった図面枠が印刷されてしまうことになってしまいます。
特に何も対処をしなければ。

もちろん対処をしない訳にはいきませんから、そうした図面の表現を整える為に、結構な手間がかかってしまうことになります。

これがモデル空間の大きな問題のひとつ。
手間がかかるけれど、やろうと思えば出来るから別に良いのでは?

と、そんな意見が聞こえてきそうですが、出来るだけ手間を減らす方向で色々と考えるのがプロの仕事です。
だからもう少し具体的に問題点を考えて、なおかつその解決方法についても考えてみることにしましょう。

■図面枠の中にも
また、分割した図面を印刷する際には、図面枠に記載する図面のタイトルと作図対象が重なってしまうことになります。

これは相当地味な問題ではありますが、自分でその作業を実際にやってみると結構困ることなんです。

大抵の図面枠は、四方に線を引いて四角で囲んでおき、下面に図面タイトルとか会社名とかを記入するスペースを設けます。

でも、そのスペースと作図の領域が完全に重なっているので、図面タイトルを記入する部分にも作図要素が入ってくることになります。

密度の高い図面などでこんなことをすると、図面タイトルが全然読めない状態になり、正式な書類として使いものになりません。

図面枠の中には作図対象を重ねない、というのが基本的なルールであって、モデル空間ではそのルールを守るのが難しい。

もちろんレイヤーを駆使した表示の切り替えをすれば可能ではありますが、かける手間の割に成果が小さいという残念な状態になります。

オートキャド(AutoCAD)を使って図面を書くという作業は、当然のことですけど仕事です。
だから効率の悪い作業は極力排除しなければならない。

そんな考え方からすると、モデル空間だけをつかって図面を書くというのは、あまりお勧め出来ない作業だということになります。

■縮尺の違う図面を
また、図面を書いていると「この部分はもう少し拡大して詳しく表現したい」という状況があります。

これは作図する図面の種類によって微妙に違うのかも知れませんが、私が作図している図面ではそんな機会が多いです。

そうすると、例えば1/50の縮尺で作図していても、その部分だけは1/5の縮尺で作図をする、という感じの作業になります。

でもモデル空間というのは、基本的に作図対象をそのままの大きさで表現するという前提があります。
そして印刷をする際に縮小をする、というのがオートキャド(AutoCAD)の大きな特徴な訳ですから。

しかし「拡大図」と言っても、そのままの大きさで書いてしまうと全然拡大図にはなりません。
当たり前ですけども……

だからモデル空間だけで拡大図を表現しようとすると、当然対象を本当に拡大して作図する必要があるんです。

先ほどの例で言えば、縮尺1/50で作図をしている図面に1/5の拡大図だから、10倍の大きさで作図することになります。

印刷する際に1/50に縮小される訳ですから、10倍のサイズにしておけば10/50=1/5の図面になる、という理屈です。

しかしこれは言うまでもないことですが、作図が非常にやりにくくなってしまいます。

普段はそのままの大きさで作図をしているところを、拡大図を作図する場合は頭の中で数値を10倍にする必要がありますから。

そのままの大きさで作図をして、完成してから10倍に拡大すれば良いことですが、それでも分かりやすくはないですよね。

オートキャド(AutoCAD)のモデル空間だけを使って作図をすると、こうした部分的な拡大図の表現が難しい。

これがモデル空間を使う際のもうひとつの問題点です。

先ほども書いたように、こちらも解決方法がある訳ですけど、それがあまり効率的ではない、というのが問題なんです。