オートキャド(AutoCAD)にとって、モデル空間というのは作図をする為に用意したスペース。
だから当然の事ですが、用意してあるモデル空間というスペースに図面を書いていくことになる訳です。

ですが、モデル空間だけを使って作図を進めていくと、図面完成の前に限界が見えてしまうんです。
ここで言う限界とは、これ以上作図出来ないとかそういう場所的なものではありません。

そうではなくて、モデル空間が持っている特徴から出てくる「出来ないこと」という意味です。
別にオートキャド(AutoCAD)の機能が貧弱だとか、設定が不足しているとか、そういう話ではなくて。

どんなに優れた機能を持っていても、ユーザーがやりたいことをその機能だけで全部実現するのは難しい、ということです。

だからそれを補う為に、モデル空間とは違った特徴を持ったペーパー空間という機能が用意されている訳です。

ちょっと話が長くなっていますが、ここでようやくペーパー空間について具体的な説明をすることができそうです。

■モデル空間の弱点
ここでまずはおさらいということで、モデル空間が抱えている問題点について簡単に思い出してみましょう。

オートキャド(AutoCAD)では通常、モデル空間に作図をしていくことになる訳ですが、そこで発生する問題は以下の二点。

・図面の分割をする作業が手間である
作図対象が大きくて、その対象を細かく表現しようとした場合、どうしても図面を分割して表現する必要があります。

でも、分割の図面をモデル空間内だけで表現しようとすると、どうしても隣の図面枠が見えてしまう。

それを避ける為には、レイヤーを変えてそれぞれの表示非表示をコントロールするなどの操作が必要になります。

言うまでもないことですが、これは結構メンドクサイです。

図面の分割は割と頻繁に行う作業なので。もう少し簡単に出来れば良いのに……というのがモデル空間の弱点です。

・拡大図を作成する際に手間がかかる
「作図対象をそのままのサイズでモデル空間に作図」というのが基本的な作図ルールです。

だから「この部分をちょっと詳しく説明したいから拡大図を作図したい」となった場合に少し困ります。
だって、拡大したい部分を作図ルール通りに表現したら、どう考えても拡大図になんかなりませんから。

そういった理由から、拡大して表現したい部分については、リアルに拡大をするしかありません。
つまり、実際のサイズよりも大きく書いていく必要があるということ。

この作業を、縮尺をきちんと意識しながらやっていくには、少し慣れが必要になってきます。
これもやはり手間がかかるので、もう少し簡単に操作したい、というのがモデル空間のもう一つの弱点です。

他にも色々な意見があるかも知れませんが、モデル空間で作図をする際に困るのは大抵この2つだと思います。
でもこれは先ほども書きましたが、モデル空間の特徴から考えると仕方がないことなんです。

それをカバーするのがペーパー空間ということで、ペーパー空間の特徴についてこれから書いてみましょう。

■ペーパー空間の特徴
モデル空間はシンプルに作図をするスペースですから、作図した図形をどう見せるか、という部分が弱いんですね。

それをカバーするためにペーパー空間がある訳です。
どちらかが便利だから使って、便利じゃない方は使わないというような話ではありません。

オートキャド(AutoCAD)のプロであれば、モデル空間もペーパー空間も、それぞれの特徴を掴んで使いこなしていきたいところです。

ということで、ここではペーパー空間の特徴について説明していきます。

実際にオートキャド(AutoCAD)上でペーパー空間に移動してみるとよく分かりますが、基本的な操作感はモデル空間と同じです。

その気になれば、ペーパー空間の中で図面を書いていくことも可能です。

でも、そうした操作はモデル空間でも出来るので、ペーパー空間でしか出来ない操作をここでは使いたいところ。

その機能というのは……

・モデル空間を一部だけ抜きだして表示することが出来る
・縮尺などの細かい設定も可能
・1つのファイルに複数のペーパー空間を作成可能
・ペーパー空間はモデル空間と並んでいるタブで管理

これですね。

この機能があるおかげで、全体図をモデル空間で作図して、印刷したい範囲をペーパー空間に抜き出すことが出来るんです。

ペーパー空間の中に窓みたいなモノを作成して、その窓にモデル空間の指定した部分を表示させる、というイメージ。

この窓を「ビューポート」と呼びます。

一度しっかりと覚えてしまえば、今後長いことこのビューポートにはお世話になるはず。
それくらい便利で使い勝手の良い機能なんです。

図面を分割したい場合でも、ビューポートを使えば自由に抜き出しをすることが可能なんです。
もう自由自在ですよね。

図面枠をペーパー空間に作図しておけば、重なって表現をする部分の図面枠が見えてしまうこともありません。

また、部分的に拡大したい場所についても、そのままの大きさで作図をしてビューポートで表示する縮尺を変えるだけ。

作図をする際に、わざわざ10倍の大きさで作図をする必要もなく、分かりやすくてスマートです。
と、そんなペーパー空間ですが、もちろん良いところだけしかない、という訳にはいかないんですよね。

次回はペーパー空間のデメリットについて書いてみたいと思います。